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「お互いサマー」制作日誌 Day 4-8 歌詞とメロディの複雑な関係


パート① 

Day 4 (7/26 Wed)

昨日は猛暑の中朝から晩まで外に居たし、自宅がいちばん集中出来るので曲をはやくリリースしたかったオレはこの日は自宅で歌詞を作ることにした。


まず、この曲を作る発端となった「お互いさま」「汗臭い」そして「夏」を言葉のモチーフに、アパートの隣人との敵対関係や過去のパートナーとの破局、最近アカウントを作っては消すことを繰り返してきた出会い系サイト内における男女間の駆け引きと被害妄想を主なテーマにしていろいろ連想していくことにした。


するとすぐに「持ちつ持たれつ」という言葉が頭に浮かんだ。その背景にはオレが生活保護を受けながら好きなことだけやりつつもやはり罪悪感があってそのたびに「まあ明日は我が身だし持ちつ持たれつだ」と呟いてきた、というのがあった。


そこで、「社会の上層も底辺も結局は持ちつ持たれつで、両者が揃ってはじめて社会は成り立つ」というテーマも導入することにした。すると最近コンビニでよく見かけるミャンマー人が頭をよぎった。


「夏」「持ちつ持たれつ」ということから、エアコンを使いまくって地球を温暖化させる一方で環境に配慮もする人類が頭に浮かんだ。そこに最近一巻から読み返していた格闘グルメ漫画の「トリコ」の影響(飲食店、食うか食われるか、捕食など) も加わった結果、下記のようなメモが出来上がった。


連日の猛暑

地球を冷やしたいけど エアコンつけずにいられない 突然の豪雨 恵みの雨 降りかかる過去の過ち 串焼き屋で雨宿り 今日のつまみは捕食者(恐竜)の子孫


110%の税金を支払って 

生活を保護された絶滅危惧種

今日は日差しが強いから 勝者の陰で一休み

明日は我が身ときどきにわか雨

来世の支度をして一人旅


今日も共食いをしてチカラをつける捕食者

調子に乗って食べ過ぎて食あたり

食い物の恨み

力持ちの捕食者は獲物の背中にもたれ掛かった


ミャンマー製の安い服を着て経済の土台を築く労働者   汗臭い   金持ちなんてクソ食らえ  オレたちはどうせ負け犬   仕事後のビールだけが至福の時間   脱水症状に気をつけながら今日もマーキングに出掛けよう


ガーリックを食べて夏バテしないようにチカラをつけよう   口臭い   お互い様

飲みすぎた金持ちの胃もたれ症候群


そして上述の通り出会い系や男女関係の要素を入れるためにいろいろと連想した。最近、知り合いが宝くじを買いまくってることを聞いたのでその要素も加えた。


ハズレくじを買ってカンパした夏

ケチな当選者に乾杯  ポイントをケチる男と無料利用の女たち  なんだかんだと世の中金よ  高級車に乗って   事故を起こして全てがパー

ケチ臭い  お互い様


婚外恋愛の要素も加えることにした。


共生関係  ヤドカリ  巻き貝様

お互い干渉しない淡白な関係

平日昼間に宿を借りて 絶賛婚外恋愛中

ライオン夫妻とハイエナの三角関係ヒエラルキー

愛なんていらない  お金がほしい

日焼けして脱皮した  高級ヘビ皮女たち 


書いてるうちに、最近一人で居酒屋で飲んでる時に隣の席に居た、おそらく出会い系で知り合ったのであろうホスト風の男と、見た目はそこそこよく金もそれなりに持ってそうだが内面は空っぽで「自分なんて大した取り柄もないどこにでもいる女」みたいな感じで自信がなく、褒め言葉に飢えているホスト狂いの女のことを思い出した。


自信が無いから外面だけ着飾って

安っぽい人間関係を築く孤独な夏

シラフでは自信が持てないから

ぼったくり価格の生ビールで乾杯

酒臭い息で接客しよう

今日のお客様はコンビニ店員


婚外恋愛つながりで、子供を産むことに対する是非や、最近よく口にしている「まあ別に生まれてきたこと自体にはまったく感謝なんてしたくもないが、美味い飯とか牛とかエアコンにはさすがに最低限の感謝はしよう」という要素を加え、最近の過保護な風潮や日本の家庭によくある親子間の共依存の問題なども加えていき、夏なのでセミの要素も取り入れた。

子孫を残そうと必死なセミ

ミンミンゼミナール  win-winゼミ

条件付きの愛情を求めて夏期講習を受ける未来の爺さん婆さん

こんな時代に子供産みたくない

でも他人の子供に介護されたい

生まれてきたくなかったけど

美味い飯とエアコンに感謝

共依存のニワトリ親子

貝で作った過保護ヘルメットに盛られた

ダシの効いた親子丼と共生関係

共倒れしないしないようにチカラをつけよう


「持ちつ持たれつ」から「ギブアンドテイク」を連想し、「競い合い/譲り合い 奪い合い/与え合い」の部分を作った。


以上のメモを連想して繋ぎ合わせると


「お互いサマー」歌詞スケッチ by 紀伊原ひろ


といった具合いに段々とまとまってきて、その結果、「夏、シャツを道具屋で売った金で買ったビーサンを装備してグルメ界を旅しながら捕食者を退治して食べ歩いてる内に人間界は冬になったがグルメ半球は依然として夏だから肝試しついでにハロウィンとクリスマスをお祝いして、ただ靴下を欲しがるだけでは倫理上の問題が生じるから私どもサタンといたしましても何かを与えようではありませんか。と、その前にここは暑くてかなわんわい。水だ!!水をくれ!!!濡れ場はどこじゃあ!!」

『お楽しみ頂くためにはそれ相応のポイントを消費していただきます』

「この世の全ての爺っちゃんの名にかけて、いただきます🙏🏼

『世の中金ですよ、金。分かりますかな金田さん』

「あなたは少々口が臭いですね」

『それはお互い様です。持ちつ持たれつというやつですよ、分かりますかな金田さん』

「すみません、セミがうるさくてよく聞こえませんでした」

『それでは彼らが鳴き止むまでしりとりでもいかがでしょうかゼミ!!』

「耳」

『ミンミンゼミ』

「右耳」

『見事ですね

「いや、ゴトーさんほどでは。。」

『金田さん

「ゴトー

そこへ突如鏡の中から現れた月姫が、ゆっくりと二人の方へ歩み寄る。


緊張が走る———


「あらお二人様月が綺麗ね」


——刹那、



といった内容の曲が出来上がった。

(ドラクエ、トリコ、金田一少年の事件簿、HUNTER×HUNTERより一部抜粋)


あとはSummerSmell(匂い、嗅ぐ)Smileに変えたり、DQ2をフィーチャーした3番だけSmileSlimeに変えたりして韻を踏み、「お互い様」と「居酒屋」から連想した「おひとり様」を加えて、1番から順に人数を増やして行った。これは勇者のひとり旅にはじまり、3人パーティ、4人、8人と増えていったDQシリーズへのオマージュでもある。


このようにして歌詞は完成した。(実際に完成したのは翌日の昼過ぎだった)


以下の動画は時間が足りずに収録出来なかった幻の3番のデモ。




一見すると適当にふざけて作ったように見えつつも実際には意外と深い意味や多重の意味が込められていて、個人的にはけっこう気に入ってるのだが、曲のリリース後にLINE友の女性に聴かせたら「何が言いたいのかよく分からなくていまいちパッとしない」「テキトーっぽい」と言われてしまい、「まあ一般ウケを狙ってテキトーに作ったしな」と言って平然を装ったが実のところかなり凹んだ次第である。


こういう、いろんな要素を詰め込みすぎて意図が分からなくなる的なミスは多くのアーティスト、漫画家、小説家、脚本家が一度は犯す過ちだろう。曲がシンプルなだけに少々歌詞を凝りすぎてしまった。


オレはよく、自分や他人の行動や言動を見聞きした時にどういうきっかけでその行動や言動に至ったのかを逆算していって導き出すというのが好きというか、実際に発狂して精神病院に入院するくらいそういう、HUNTER×HUNTER的な思考になる癖がある。


当然、他人の作品の歌詞やプロットを深読みしたり、どういう経緯でこういうキャラを用意してこういう展開になったのかみたいに逆算するのも好きだからそういう感覚で今回も歌詞を作ったが、結果的に一般視聴者と自分の感覚や思考回路の違いに絶望することとなった。


しかしこの解説を読んで「なるほど!」みたいになってくれる人もいるだろうからめげずに頑張ることにする。

Day 5 (7/27 Thu)

この日は午前中は歌詞を完成させてその後Day3で仮録音したギターに合わせて歌を仮録音し、余力があればそのままスタジオでギターの本番レコーディングをする予定だった。


歌詞制作は家でやれば良かったが、家には居たくなかったのでチャリで15分の公園でやることにした。この公園の近くには歌の練習に適した工場地帯があり、歌詞を作ったあとそこで練習するつもりだった。スタジオ方面ではなかったが、逆方面でもなかった。


複数の予定がある時に「一旦家に帰る」という思考回路にならず、一度に全てをやらなくては気が済まない性質のオレは歌詞制作と練習、スタジオ行きの全てが出来るようにこの場所を選んだ。


毎度のことながら鳩がしらじらしく寄ってきたり白昼堂々と交尾をしたりしていたが鳩の観察もたいがい飽きたし、昔はてんとう虫や鳩の交尾に嫉妬していたが今となってはどうでもいいことだった。


歌詞作りは順調に進んで昼過ぎには完成したが、昼飯を買いに行く時に金が無いことに気づいた。


7月は夏服を買ったり虫除け用品や湿気取りを買ったりチャリのパンクを治したりと細々とした出費が嵩んでいた。いつも家で夜飯を食べるのも虚しくなって飲み屋や飲食店を利用することも多くなっていた。夏は飲み物代も地味に痛かったので水筒を持ち歩くことにした。夏になると無性にビールが飲みたくなって買ってしまうのも結構デカいし何よりタバコ代が馬鹿げている。さらに「これで最後だ」と言い聞かせながら出会い系なんぞに課金してしまった。マイナポイント第二弾に一時救われたがそれも底をついてきた。


手元にはデビットカードが1枚と、Suicaカード、PayPayアプリがあったが残金がほとんどなく、昼飯とタバコを買うのが限界だった。


そんなわけでスタジオに行くことはあきらめ、歌の練習だけすることにした。しかし金があってもこの猛暑の中チャリで30分ちょっとかかるスタジオまで行く気にはなれなかった。


工場地帯のちょっと寂れた辺りまで移動して暗くなるまで歌の練習をした。

Day 6 (7/28 Fri)

スタジオでギターの本番録りをするために近所の公園で練習と仮録音をした。Day3で録ったやつはコードの全ての音を一発録りしたものだったので、コードの低音と高音を別々に録った。一部、低中高の3つに分けた。


歌詞主体のシンプルな曲だったから凝ったアレンジは必要なかった。季節物の曲だから余計なことはせずにパパっと仕上げたかった。


猛暑だったがこの日も風が強くて湿度も低めで清々しかったが風通しのいい日陰に限った話で、この炎天下でスタジオまで30分ほどチャリを走らせるのはしんどかったため、いつもは15時か16時で予約していたのを17時に変えて予約した。


しかしスタジオに向かっていた16時台でも日差しは強烈どころか西陽が一番きつい時間帯で、18時にしておけばよかったと少し後悔した(スタジオは西側にあった)。氷を入れた水筒が大活躍した。


いつも通りクズなくせに良い子ぶってスタジオの店員さんに挨拶をし、2時間でギターを録音した。


金曜だったし時々利用するスタジオ近くの居酒屋に行きたかったが金がなかったし、まだギターしか録れてないから歌も録ってからレコーディング完了祝いに飲みに行こうと思ってこの日は辞退した。居酒屋でライブをする妄想にふけっていたが、人が苦手で嫌いだから実現することはなかった。


とにかく早く完成させたかったし、昨日仮録音出来なかった部分の歌を吹き込みたかったから家には帰らずにそのまま工場地帯へ行き、挙動不審に辺りをキョロキョロ見渡しながら21時半まで歌っていた。なぜ世界中でたった一人オレだけがこんなにも周りが気になったり鳥みたいに警戒心が強くてキョドってしまうのだろうかと、世界に対する拒絶感と憎悪が高まった。


金が無いから夜飯は例によって納豆ご飯で済ませ、さすがに疲れたから早く寝た。


Day 7 (7/29 Sat)

朝起きて音楽を聴こうとしたらイヤホンの片方からしか音が出なかった。原因はイヤホンではなくLightning  ステレオミニの変換アダプタにあった。ELECOM製のやつで、半年〜1年くらい家でも外でも酷使しまくっていたがついに壊れてしまった。よりによって今かよと思いながら渋々徒歩圏内にある家電屋に行って同じ物を買った。仰向けの姿勢でiPhoneを胸の上に立てて操作するのが一番ダメージを与えた要因だろう。コネクタを上部またはサイドに付けてほしいものだ。本体を逆さにして180度回転するアプリもあるが、Safariですら少なくともiPhone8では回転しない。今実験したらChromeは回転したから一瞬Chromeをメインにすることも考えたがやっぱりSafariのほうが使いやすいし純正なだけに更新も早いからやめた。


昨日スタジオに行った時に今日の予約はしてあった。暑いから夜間が良かったが土曜で混んでたため16時になった。スタジオ行く前に練習しようかとも思ったが、この日も猛暑で家に居たかったし、喉(のど)を酷使して潰してしまうことを懸念していた。タバコも控えていた。


昼の間は掃除したり、歌を合わせるために昨日録ったギターを編集していたが、相変わらず時間配分能力がまるでダメで、時間ギリギリまで編集していた。「女優ビッグバン」の時の失敗から、ボーカル用のガイドラインをピアノの音で作っておくつもりだったがその時間はなかった。(そして後述の通りまたキーを外してしまった)


猛暑の中チャリを走らせた。無性に炭酸が飲みたくなり、テンションを上げる目的も兼ねてスタジオ近くのコンビニでスミノフ・アイスを買った。元気な曲とは裏腹に、最近は気分が沈んでたり自殺衝動に駆られることが多く、この日も「オレなんでこんなことしてるんだろ」みたいな感じでボーッとしていたが酒を入れて無理矢理やる気を出した。正直音楽なんかより彼女を作りたかったが、制作に集中するため出会い系は退会した。


レコーディングには思いのほか時間がかかるのは今までの経験から分かっていた。特に歌はテイク数を重ねる必要があった。ポップガードも使わずにiPhoneを手に持って録音してたため、「ボフッ」という空気音が入るミスが多かった。iPhone用のポップガードを自作する必要がある。


2時間で予約していたが案の定半分くらいしか終わらなかったので1時間延長することにした。最初から3時間予約することも考えたが、長時間歌うことで喉の調子が悪くなる可能性があったからそれはやめた。


一つ一つのパートにテイク数をかけすぎたのが今回の失敗だった。当初は曲の4番まで全て録るつもりだったが編集の時間も考えると諦めざるを得ず、今年は2番までで妥協しようと考えた。3時間で大部分は録れたが、全部は録れなかった。腹も減ってたし今日はもういいやと思い、切り上げた。


この日も飲みに行く気にはなれなかった。金も無かったが、金があったとしても行かなかっただろう。レコーディングも中途半端だったし、何より店に行ってもいつもオレだけひとりぼっちなことにもう耐えられないでいた。


途方もない虚しさに駆られながら帰路についた。


土日はいつもカレーを作ってるがウィンナーと目玉焼きを焼いてタバスコをかけまくって食べた。


はやく曲を完成させたかったのでさっそくボーカルパートの編集に取り掛かったが、「競い合い お互いサマ〜」の部分のキーが合ってないことに気づいた。ラフ録りの時点では気づかなかったが、ギターの低音と高音を分けて綺麗に録ることによって一発録りでは隠れがちな中域音が聴こえるようになり、その音とボーカルのキーが合っていなかった。特にハモリのパートに違和感があった。


このセクションは「季節外れのハロウィンパーリー」の前と後にあるが、後ろの方はごく普通のマイナーコードだから音も合わせやすく、歌が少し低めになっても違和感は少なかったが、前の方はメジャーとマイナーの中間みたいな変則的コードにした(Aメロのあとでいきなり悲しげなマイナーにすると微妙に不自然だった)ため違和感が目立った。


ギターのチューニングまたはポジションを間違えたのかとも思ったがそうではなかった。ピアノの音でメロディラインを打ち込んだところ、ボーカルが3分の1音くらい低かった。疲れていたがこの問題が気になってしょうがなかったので車通りが多いが歩道の人通りは少ない国道まで行ってピアノの音に合わせて歌ったところ、一応少しは直ったが車の音がうるさくて聞こえずらいのでまた翌日作業することにした。


Day 8 (7/30 Sun)

猛暑日。キーの問題を修正するために水筒持って工場地帯へ行ってピアノのガイドを聴きながら歌を吹き込んだ。


メインパートの方はほぼ問題なかった(キーをつかみづらく、正式リリース版でも微妙に低くなっているが)。問題はハモリの方で、何度やっても合わず、最終的に別のパターンを作ったがまだ違和感は残っていた。


スタジオに行って録り直すことも考えたが、3日連チャンで猛暑の中スタジオまで行く気にはなれなかった。バスや電車は交通費かかるから使いたく無かった。


いっそのことコード進行自体を変えてしまおうと思い、いったん家に帰ってギターを取ってきて近くの公園で編曲を試みたがいまいちいいアイデアが浮かばなかったがとりあえず適当に妥協した形で作った。人が多かったから歌を乗せるためにまた工場地帯へ向かった。


歌をのせたがいまいちパッとせず、歌詞を変更するのもめんどうだったので結局元のコードを採用することにし、ハモリパートを変えることにした。(正式版と前の記事に貼ったデモ版を比べると違いが分かる)


気づくと日も落ちてきて蚊も出てきたので帰宅した。


つづく


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