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「女優ビッグバン」制作日誌 Day 3-12 ナイトメア・スタジオと節約レコーディング

パート①

Day 3 (4/4 Tue)

この日も公園パーキングへ出かけ、午前中は昨日作った曲のギターパートを仮録音していた。会食恐怖症で聴覚過敏のオレは飲食店の類が好きではないため、いつも通りファミマでサンドイッチをテイクアウトした。薬の副作用と人生に対する絶望感によってワシの食欲は衰退の路を辿っていた。


午後はボーカルのキーを合わせるため、作成したギタートラックのピッチをAudioStretchというアプリを使って変えながら合わせていった。裏声や濁声を使うシーンがあるためキーを高めに設定した。


夜まで歌の練習に明け暮れた。


夜はレディ・イン・ザ・ウォーターという、やや過小評価されたB級映画を観た。女性の裸が出てきたが勃起することはなかった。歳は取りたくないものだ。


ナイト・シャマラン監督「レディ・イン・ザ・ウォーター」

Day 4 (4/5 Wed)

この日は風がすさまじく、ストレス耐性の無いオレには厳しい1日となった。


気分転換目的と、大声で歌の練習をする目的を兼ねていつもより遠めの人が少なめの河原へ行った。吹きさらしの河原なだけあって風がものすごく、歌の仮録音をしたが風の音が入りまくって大変だった。ちゃんと録りたい時はポップガード代わりに手袋をiPhoneのマイク側に被せているが、暖かくなったため手袋は持ってなかった。靴下でもよかったが臭かったし、足が寒くなるのが嫌だった。


風に耐えながら夕方まで練習をしていたがさすがに辛くなってきて、川からそう遠くない所にスタジオがあったからそこでやることも考えたが金を使いたくなかった。


いったん川から離れ、ローソンでコーヒーを飲んで、不安と絶望感が増して犯罪的な思考回路になるカフェインを敢えて摂取した。(酒と同様、飲んでる瞬間は抗うつ作用などがあって気持ちよく、中毒になってしまう)


風の音は入ったがボーカルは思いのほかなかなか良く録れたのでテンションが上がってきて、コーヒーを飲みながらタバコを吸い、妄想にふけってニヤニヤしていた。


また同じ場所に戻るのも面倒だったので向こう岸に移動し、19時すぎまで練習した。「広大な子宮に宿った無数の人生」の部分を夜の河原で歌ってる内に美しい気分になった。常にこういう精神状態でいられれば良いのだが…


Day 5 (4/6 Thu)

この日も風が強く、どんよりしていた。スタジオに行って本番レコーディングをしたかったが天候が不安だった。雨だとバスで行かなくてはならず、交通費を使いたくなかった。車があればそもそも車内で練習も録音も出来たのだが、病気になってからは車は乗らなくなり免許も失効して、今はチャリしか足がなかった。


とりあえず昨日録った歌の編集をしたりしているうちに雨が止んできたのでスタジオを予約した。歌の前にギターを録る必要があった。Day 3で録ったギターの仮録はコードの全ての弦をまとめて録ったやつで、それだと汚くなってしまうしステレオ感も出せないのでコードを低音、中音、高音に分けて録る必要があった。タイミングがかなり重要な曲(特にラップ部)だったからメトロノームの2倍のテンポで打つハイハットトラックを作成しておいた。(メトロノーム自体を高速にするとDAWのタイムラインの区切りも細かくなるから嫌だった)


音圧を上げるためにさらに全弦まとめて録ったトラックを音量を低めにして中央に置くことも考えたが、ファンキーな曲だからあんまり重厚にするよりスッキリしてメリハリのある音作りのほうが良いと思い、全弦まとめ弾きバージョンは録らなかった。


そもそも時間が足りず、2時間でパパッと録るつもりだったがピッキングが下手なオレはミスをしまくり、予定を大幅に上回る時間を要した。特にアコギの録音は慣れてなく、ピック後にボディを叩いてしまいボンッという音が入るミスが多かった。響きすぎる低音も悩みの種だった。


結局1時間延長することになり、1,600円使ってしまった。生活保護受給者には痛い出費だ。しかも3時間でも終わらず、翌日の予約をした。


いつもならガイドトラックを用意してから本番に臨むのだが今回はぶっつけ本番でやってしまい、それが最大の失敗要因だった。


飲み屋に行きたかったが15日に障害年金が入るまで金がないので自粛し、家に帰って納豆ご飯を食べた。


あんまり気乗りしなかったが出会い系で知り合った女性にメールを返して(週末に寂しくなって衝動的にメル友募集しても平日になるとどうでも良くなってしまう)、映画を観て寝た。


この日のブラウザ履歴を見たところ乳首責め系の動画を見てたらしく、数日続いていたオナ禁には失敗したらしい。ポルノ女優を葬り去るには相当な鍛錬が必要そうだ。


Day 6 (4/7 Fri)

昼すぎまで昨日録ったギターパートを編集した。スタジオは夕方からだったが、練習しておくためにスタジオの近くの公園に行って練習してからスタジオへ向かい、残りのギターパートを録った。


これまで何度もスタジオの店員の人と仲良くなる妄想をしてきたが今回もそれが叶うことはなかった。なかなか人に心を開けなくて困る。


昨日は自粛したが、とりあえずギターを無事録り終えたし金曜の夜だったからスタジオの近くの居酒屋で奮発することにした。いつものようにバイトのお姉ちゃんをジロジロ眺めていた。周囲や話し声が気になってしょうがないADHD患者には居酒屋はかなりむしゃくしゃする環境で、デカい声で喋っている人間に対する殺意を抑えながらイヤホンで音楽を爆音で聴いてやり過ごした。嫌なら行かなければいいのだが、酒の誘惑には勝てなかった。


途中、となりのカウンターに女子大生くらいの女の子2人組が座ったが、手前に座った、可愛い顔して相当腹黒そうな女の子のおっぱいがデカく、何度もチラ見していた。会計の時にお釣りの100円をバイトの女の子にチップ代わりにあげ、満面の笑みで店を後にしたが、数分後にはこの世の全てが嫌でたまらなくなっていた。


この日は映画は観ず、帰宅後も酒を飲みながら妄想にふけっていた。出会いサイトも放置していた。


急ピッチで曲を完成させたくて焦っていたせいか仕事モードは帰宅後も続き、明け方までジャケット画像の仮制作をしていた。


この時点では女優の眼を女性器に見立てたアートワークを想定していたが、一般ウケを狙って最終的には不採用となった。


オリジナル曲「女優ビッグバン」の不採用アートワーク

Day 7 (4/8 Sat)

昨夜から明け方まで仮アートを作っていたので昼頃まで寝ていた。この日は雨の土曜だったので引きこもり日和だったから自宅にいた。


Day 5-6でレコーディングしたギターの編集作業をしていた。EQやコンプレッサーはまだ掛けず、OKテイクの選別と切り貼り作業、タイミング合わせ作業をした。


一時的に雨は上がってたがまた夜に降り出す予報だったので、それまで歌の練習をしようと思って工業地帯の方までチャリを走らせ、トラックの音に紛れながら歌の練習をした。この曲の特に明るい部分は音を外しやすかったり、声の力加減の調節が難しく、何十回も練習した。この時は仮録音とはいえちゃんと手袋をiPhoneに被せて録った。


18時くらいになると予報通り降ってきたので帰宅して酒を飲みながらカレーを作った。(土日は高確率でカレーだ。)


夜は久しぶりにシックス・センスを見て以来マイブームになっていたM・ナイト・シャマラン監督のホラー「ヴィジット」を見た。かなり面白かった。この監督の独特の感性とか視点がけっこう好きだ。主人公がソニーのパソコンVAIOを使ってたがこの監督はソニー信者なのだろうか。オレは映画やドキュメンタリーに出てくるPCとかタブレットをチェックするのが地味に好きだ。Macは好きだがiMacとかMacbookが出て来るとベタすぎてつまらない。MacMacでも同監督作の「ミスター・ガラス」では古いiMac(有名な半透明のやつ)が登場した時は感激した。


M・ナイト・シャマラン監督映画「ヴィジット」
 

Day 8 (4/9 Sun)

天気は悪くなく出掛けたい気分だったが家でやるべき作業がたまってるし、日曜に出掛けてもどうせまた家族連れやカップルに嫉妬するだけだろうと思い、とりあえず部屋を掃除することにした。


ギターパートの整理は出来てたから家でやる作業はドラム/パーカッションの打ち込みかアートワーク制作くらいしかなかったが、ボーカルが一番気がかりだったのでまた昨日練習出来なかった部分を仮録音したくなり、昨日同様に工場地帯へ行って曲の後半部分の練習を日没まで練習した。


夜は酒を飲んで昨日のカレーの残りを食べながら例によってナイト・シャマラン監督の映画「ハプニング」を見たが正直いまいちだった。


M・ナイト・シャマラン監督映画「ハプニング」


出会い系で何通かメールのやり取りをした二人の女性にLINE交換をお願いすると二人とも交換してくれた。

Day 9 (4/10 Mon)

寝起きに性欲が異常に高まり、前に見たAVを見たくなってうろ覚えの名前で検索したが見つからなかった。代わりに他の動画を見たようだが、実際にはオナニーはしなかったかもしれない。最近はけっこうそういうパターンが多い。


この日は天気が良く、暑くもなくかなり快適だった。風はあったがそこまで強くはなかっった。


スタジオで歌のレコーディングをしたかったが、その前にもうちょっと練習しといたほうが良いと思っていた。だがいきつけのスタジオ方面には思いっきり歌を歌える場所がなく、逆方面の河原へ向かった。河原方面にもスタジオはあるが、防音性がショボくてピアノの音が聞こえたり料金も割高であまり気が進まなかったが、結局そこの予約を取った。


昼過ぎまで河原で練習し、いつも通りファミマで買ったミックスサンドを食べ、スタジオへ行った。


一番難しくて気がかりなCセクション(明るくなる部分)のボーカルを入れたが、出だしのキーを何度も外してしまった。


帰ってから聞き返すと出だしだけじやなく全体的に半音くらい低くなってしまっていた。メロディのガイドラインをピアノかなんかで作ってから録るべきだった。2時間分の1200円をドブに捨てる結果となった。


まだ16時すぎくらいだったのでまた河原の別エリアに戻り、練習をした。帰りは大声で歌いながらチャリを疾走させた。


夜は例によってナイト・シャマラン監督の最近の映画「オールド」を見た。結構面白かった。


M・ナイト・シャマラン監督映画「オールド」

Day 10 (4/11 Tue)

薬を切らしてたので午前中は病院へ行った。

この病院はいつもの河原寄りの所にあった。河原とは逆方面にある、かかりつけスタジオは定休日だったため、妥協して昨日同様、そのまま河原寄りスタジオへ行った。


昨日の失敗から学び、行く前に河原でメロディラインのガイドトラックをピアノの音で作り、少し練習してからスタジオへ行った。


ガイドラインを聴きながら昨日失敗したCセクションのレコーディングに再挑戦したが、それでもボーカルのピッチが全体的に微妙に下がってしまった。ガイドの音量が小さめだったり、ギターパートをまだ編集しきってなくてコードの音を拾い難かったのが原因だった。


Cセクションはメインボーカルを1トラックで済ませようとするとどうしても迫力に欠けてしまったり何十にも重ねたコーラスに圧倒されてしまった。迫力を出すために濁声で勢いよく歌うとこのセクションの透明感やフンワリとした雰囲気を損なってしまうし、クリアで控えめに歌うと今度は元気がなくなってしまう。だから間をとってクリア版と濁声版を重ねることにし、二つのバージョンを録った。クリアな方はともかく、濁声だと音を外しやすかった。


結局、今回もほとんどが失敗テイクに終わってしまった。早くプロジェクトを完了させたいのに思わぬところでつまづいてしまい、焦りと苛立ちが募った。


もともと、一つ一つの作品に時間をかけることにうんざりして、(エフェクトや場合によってはベースやドラムも要らない)アコースティック路線に転向したのになんだかんだと時間がかかってしまった。


まだ夕方だったが早く家に帰って編集したいこともあり、この日はそのまま真っ直ぐ帰宅した。


Day 11 (4/12 Wed)

録り直しをしたかったが雨だったので自宅で昨日録ったボーカルを編集したりしていた。


LINE交換した2人のうち、食事か飲み相手の募集に返信してきた1人はただのP活女だったから「奢ってほしいなら最初からそう言えよクズ」と言ってブロックした。「食事募集=P活」という思考回路らしい。いつもはブロックされることが多かったワシだが自分から女をブロックするようになるとはのう。もう二度と出会い系には手を出さないと誓った。出会いは無料に尽きるわい。


惰性で乳首をいじりながら波多野結衣で抜いて眠りについた。


Day 12 (4/13 Thu)

午前中は自宅の近くの公園のトイレ(無料の簡易スタジオ)でギターのアレンジ部分を軽く録音したり、Cセクションのコーラスの練習をした。


一度帰宅し、かかりつけスタジオに電話をし、無理かと思ったが夕方の3時間枠の予約を取ることが出来た。


極力制作費を抑えたかったので3時間で全てのボーカルパートを録るために気合いを入れた。カフェインなどの接種を控え、喉を痛めないようにタバコも控え、リップノイズ対策として水とお茶だけ飲んで口の中も綺麗にしていった。


ボーカル録りなので気分を上げる必要があったので途中で酒を買っておいた。


はじめは因縁のCセクションの録り直しをした。昨日の反省から、ガイドの音量を上げ、ギターも左右に振り分けて聴きやすくして取り掛かったところ、すぐにOKテイクを録ることができた。河原寄りスタジオでキーが低くなってしまったのは、部屋が完全な防音ではなかったりかなり狭くてテンションが上がらなかったのも要因だったのだろう。今回のかかりつけスタジオではすんなりと上手くいった。練習の甲斐もあった。


昨日は一昨日録ったボーカルを編集していたが、結局それらは全て没にしてすべて録り直し、昨日の編集は全て無駄になった。


一つ一つのセクションに時間をかけすぎないようにするため、テイク数を少なめにして、ある程度OKだったら次のセクションに進むように気をつけた。


あっという間に時間が過ぎていき、1時間半たったところでトイレに行き、ロビーで酒を飲みながら一服しながら、ミュージシャンになることを夢見てた二十歳くらいの頃のことを思い出したりしていた。この老舗スタジオには20年前にも一度来たことがあった。あっという間に20年が過ぎ去ってしまったな


難所のCセクションを終えて以降はどのセクションも比較的すんなりと録ることが出来た。静かになる部分は見せ場なので多少テイク数を多めに重ねた。


無事に時間内で全て録り終えて上機嫌になったオレはそのまま飲み屋へ行きたかったが金がないため断念し、コンビニでビールを買ってスタジオ付近の公園で一服しながらさっき録ったボーカルを含めたミックスを作成して聴いていた。


夜の公園で酒を飲んでると、いくつになっても幼稚園児のように自己と他者の境い目が曖昧なメンヘラ気質のオレの心の中に次から次へと他人の人生や感情が入り込んできて、さらに風に乗って昭和の情景や江戸時代の匂いが入り込み、頭の中でタイムトラベルをしていた。膨大な数の人生と膨大な歴史に圧倒されて、激しい孤独感に襲われながらも、それでいながらどこか心地良い、永遠のようなものを感じていた。自分なんてどこにも存在しないのかもしれない。じゃあここでこうやって考えたり感じている自分はなんなんだろう。相も変わらずそんなことをぼんやりと考え、そして死について考えていた。


帰ってからもしんみりと酒を飲んでいた。精進料理の納豆ご飯はこの日は辞め、ボーカル録り完了祝いにコンビニ弁当とポップコーンを買って「エクソシスト」を20年ぶりに観たがやはり名作だった。


名作ホラー映画「エクソシスト」

映画レビュー記事みたいになってしまった。映画音楽に転向すべきだという神の啓示なのだろうか。だけど神なんていなかった。誰も崇拝なんてしたくない。



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